「経理が回らない」には、原因の型がある。人・仕組み・量、どれが問題かで対策が変わる

「経理が回らない」には、原因の型がある。人・仕組み・量、どれが問題かで対策が変わる

社長から「決算の数字が出てこない」「担当者が辞めたら途端に経理が止まった」という相談をよく受けます。しかし、同じ「経理が回っていない」でも原因はまったく異なります。原因の型を見誤ると、対策が的外れになるだけでなく、コストと時間を無駄にします。まず「自社はどの型か」を診断することが、経理の立て直しにおける最初の一手です。

型A ― 人の問題(属人化・退職リスク)

中小企業の経理で最も多い型です。「経理のことは田中さんに聞かないとわからない」という状態が長年続いていた会社が、田中さんの退職を機に経理が完全に止まる――よくある話です。

属人化が危険なのは、問題が顕在化するまで見えないことです。担当者が在籍している間は何も起きない。しかし、退職・病気・産休といった出来事が重なった瞬間、経理は止まります。

実例イメージ

売上高約3億円の加工会社。15年間、ベテラン経理担当の佐藤さんが1人で請求・入金管理・月次試算表作成を担っていました。佐藤さんが体調不良で1ヶ月休んだ際、後を引き継げる社員がおらず、得意先への請求書が2ヶ月分遅延。キャッシュフローへの影響が出て初めて「属人化リスク」を経営者が認識しました。

対策の方向性

  • 「1人しか知らない」作業を最優先で文書化。月次の仕訳・請求・入金消込のフローをA4一枚のチェックリストに落とす
  • 引き継ぎ設計:後任者が3日で動けるマニュアルを目標に。完璧なマニュアルより「不完全でも存在する」マニュアルが重要
  • 経理代行の活用:属人化解消の即効策として、月次記帳・請求管理を外部に出す選択肢も有効

型B ― 仕組みの問題(フロー不備・ツールの限界)

「マニュアルを作ったのに同じミスが起きる」という場合、問題は人ではなく仕組みにあります。型Bの特徴は、担当者が変わっても問題が繰り返されることです。

典型的なのは、承認フローが口頭のみで文書化されていない、経費精算の締め日が周知されていない、クラウド会計を導入したものの使い方が担当者によってバラバラ――といったケースです。ツールが古い場合も型Bに分類されます。Excelでの手動管理が続いており、転記ミスや漏れが常態化している会社は少なくありません。

実例イメージ

賃貸管理を手がける会社では、毎月末に家賃入金の確認漏れが数件発生し、オーナーへの送金が遅延していました。担当者を変えても同じ問題が起きるため、原因を探ったところ「入金確認→台帳突合→送金指示」の承認ルートが明文化されておらず、誰が最終確認をするか曖昧なままだったことが判明。フローチャート1枚を作成して壁に貼り、クラウド会計のワークフロー機能を使った承認ルート設定に変更したところ、翌月から遅延がゼロになりました。

対策の方向性

  • 業務フローの可視化:誰が・何を・いつ・どこに提出するかを1枚の図にする。「なんとなく動いている」をなくす
  • 承認フローの明文化:口頭での「○○さんに確認して」をシステムのワークフロー機能に置き換える
  • テンプレートの統一:請求書・領収書・経費申請書の書式が各自バラバラな場合は統一フォームを用意する

型C ― 量の問題(業務過多・キャパシティ超過)

担当者は優秀で、仕組みも整っている。しかし、業務量が物理的に許容を超えている状態です。増収期・採用増加期・M&A後などに起きやすく、「とにかく忙しい」が慢性化します。

型Cを放置すると、担当者の疲弊→離職という型Aに転化します。また、量をさばくために確認を省くようになり、型Bのミスが増えるという連鎖も起きます。つまり、型Cは型A・型Bの温床になります。

実例イメージ

取引先が20社から80社に増えた製造会社では、月次の請求書発行・入金消込の件数が4倍になりました。担当2名では対応しきれず、消込作業が翌月にずれ込み、資金繰り表の精度が低下。社長が毎月末に「今月の回収はいくら?」と聞いても即答できない状態が続きました。経理代行を一部導入し、定型業務を外に出すことで、2名は管理会計と決算対応に集中できるようになりました。

対策の方向性

  • 「必ず社内でやる業務」の絞り込み:意思決定・経営判断に直結するものだけ内製し、定型処理は外出しを検討する
  • 自動化の導入:入金消込・経費精算・請求書発行をクラウドツールで自動化し、作業量を物理的に減らす
  • 経理代行の活用:増収期や決算繁忙期のスポット対応として使うことで、内部リソースの集中を守る

まとめ

  • 「経理が回らない」原因は、人・仕組み・量の3型に分類できる
  • 型を誤ると対策が機能しない。マニュアル作成は型Aには効くが、型Bには部分的にしか効かない
  • 型Cを放置すると型A・型Bを呼び込む連鎖リスクがある
  • どの型でも、経理代行・自動化・フロー整備の組み合わせが有効な手段になる
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